Review

椎名林檎「唄ひ手冥利〜其の壱〜」

(2002/05/24)

まず驚くべきは怒涛のフライング発売(笑)1日というのはごく普通だが。 都市部では当然のことなのでしょうか?はて。そして、買った時にきっと誰も が「?」と思うであろうことは、このパッケージである。普通の2枚組にしな い所が彼女らしい。コスト的も普通の2枚組のケースを使った方が安いハ ズ・・・とこれ以上はネタバレになるのでここまで。

椎名林檎というパレット

現在のメジャー音楽シーンにおいて、彼女ほど詩と曲が不可分になってい る人はいないと思うし、その作詞のセンスは一般でも評価が高い。歌詞カード でなく、譜面を見るのが一番わかりやすいと思うが、音符と詩の組み合わせ方 は絶妙で、まず字余りや、曲が2番になったから無理矢理入れたような音、と いうのがない。レパートリーとしている曲数が少ないとはいえ、歌詞を間違え ないというのは(DVD:下克上エクスタシーをご覧下さい)しっかりとした、 構成が出来ている故であると思う。作詞のセンス、というのは意見が分かれる かもしれないが、雑誌ダ・ヴィンチの「小説を書いて欲しいミュジシャン」で ブッちぎりの得票でトップだった、ということはまぎれもない事実である。

今回、文才という意味で突出している彼女が、あえてカバーという攻め方 をしてきたのだから、これは見逃すことはできないだろう。カバーということ は、当然その文才を押さえ、完全に音から勝負ということに近いからだ。もち ろん曲や、詩のチョイス(訳詩を使用している物等がある)という部分も残っ ているが、「唄ひ手」でなければ単なる雑音がCDに残るだけである。

副題としてパレットと書いたのはそれを表現している。彼女自身が絵の具 であり、パレットである。風景を各々の曲とするならば、仮にカンバスを亀田 氏、森氏、とするならば(ちょうど2枚あるのである:-)、そのカンバスに景 色として完成したものを改めて「彼女の色で」描きなおす、というイメージで 前書きを書いてみた。この文章がこのCDを聴くナビになれば幸いである。

以下、いくつか彼女の発言を知ってることを前提として文章を書いていま す。発言自体は、 http://www.toshiba-emi.co.jp/ringo/ をご覧ください。


亀Disk

気がついたら、髪型が普通に戻っているのが残念。モヒカンがいい!とい う声は多いような気がするのだが(笑)良くも悪くも亀田サウンド全開。日本 語詩のカバー曲は全てこちらにまとめられて、対比するなら「和」のサウンド。 アレンジャーなら、この選曲を見て思わず立ち尽くしてしまいそうな気がする がこれまた「良くも悪くも」亀田色でアレンジしてある。亀田氏のポテンシャ ルを感じさせる。

灰色の瞳

いきなり激しいギターの刻みから始まる。多彩な音楽を表現できる虐待グ リコーゲンのホームというべき(?)ハードロックに仕上がっている。スピッ ツの草野マサムネ氏とのデュエットは絶妙。林檎嬢の狙いは見事、と思うが、 スピッツのイメージからこの曲を聴くと違和感があるかもしれない。そこは評 価が分かれる所だろう。

more

雲の上のイメージ、ロリータ的なイメージ、天使のイメージが良く似合う。 亀田氏のポップ度95%という感じ。アクはないが、心地よさが残る。

小さな木の実

なぜか彼女の作詞かというような錯覚を一瞬感じる。逆に言えば、それだ け自分にピッタリ合った曲を選んでいると言えるだろう。今まで、彼女のアコー スティックサウンドは少なかったので、逆に新鮮さを感じなくもない。シング ル「歌舞伎町の女王」のカップリング曲「実録版」と比較するのも好いだろう。

i wanna be loved by you

本人からのコメントも、曲自体も短い。ただ、虐待グリコーゲンのメンバー からしたら、お手のものなのなのだと想像できる。まさにインターバル。

白い小鳩

タイトルと曲のギャップが一番激しいと思うのだが(笑)ジャニス・ジョ プリンの思わせるような、4分のスネアを交えて曲が始まる。曲中に入るパー カションの音、ギターのリフ、チープなオルガンの音色、完全に狙いすました 「ダサいことをあえて真面目にやる」面白さを強く感じる。参考として、シン グル「ギプス」のカップリング「東京の女」と比較するのも吉。

love is blind

「シングルと同じ録音をアルバムに入れてそれでオシマイ、ということは 絶対にしない」と公言している、彼女があえて入れているこれまでのシングル・ アルバム・DVDの既出曲。(DVD「下克上エクスタシー」に収録。)全体 の仕上がりは比較的ライヴに近いが、ストリングスを加えより美しく、儚く散 り去るようなサウンドに仕上がっている。アレンジとしては、あえて金原千恵 子ストリングスを起用していることに注目。

木綿のハンカチーフ

亀田氏のポップ色炸裂(笑)デビューシングルである「幸福論」に一番回 帰している印象を受ける。また、「君の瞳に恋してる」(DVD「下克上エク スタシー」収録。原曲も御1聴あれ)と比較すると面白い。改めて聴くと、筒 美京平氏の偉大さを感じてしまう。「君への贈り物 探すつもりだ」の部分の 彼女の声の独特さが「抜けて」いるところは要チェック。

yer blues

一番普通な仕上がり。弥吉氏のギターサウンドを一番堪能できる。中間部 のロック色を抜いたサウンドはなぜかマーラーのシンフォニーで多用されてい る手法を彷彿させるように思うのは筆者だけだろうか?

野薔薇

ヤマハの昔なつかし庶民向けキーボード、ポータートーンとディストーショ ンギター1本だけと思わせるサウンド。冗談抜きで、デモテープ用の機材しか 使っていないのでは?と思わせる。ライヴで入場(?)する時のBGMにうっ てつけかもしれない。(もちろん「発育ジャポン」を意識して、である:-)


森Disk

亀Diskで書いた通り、対比するならば「洋」の1枚。森氏の写真を初めて 見たが、ゴスペラーズの安岡氏とキャラクターがカブってるのは気のせいか (笑)全体的に音の数・密度が少なく・薄く、スッキリしたサウンドに仕上がっ ている。良くも悪くも亀Diskの対比が激しいため、「こっちのDiskが好き」と 思ってしまうのは見事に彼女の術中にはまっているのか?(笑。ちなみに筆者 は亀Disk派である。)

君を愛す

意表をついて大きめのシンセサウンドに包まれて始まる。全体的に包み込 まれるような感じ、それでいてアクセント感の強いドイツ語がまったく違和感 なく溶け込んでいるのが不思議。(ドイツ人はこういうサウンドを作らないの か、という突っ込みはあるだろうが。)

jazz a go go

今回のアルバムの概要発表時にメンバー・プレイヤーを眺めていて「小島 麻由美に似た曲が出来るのでは?」ふつふつと感じていた。その期待(?)は 見事に裏切られるのだが、あえて一番この曲が「小島真由美色」が出ている、 と書いておこう。(ジャズテイスト、ビフラフォンの使い方、スキャッ ト・・・)ちなみに筆者は小島麻由美ファンでもあるので、そちらも必ず聴く ように(笑)

枯葉

このくらいメジャーな曲になると、もはや選曲することすらためらわれる ものだが、歌い出しのフランス語ですでに背筋がゾクゾクしてしまう。中間部 の鍵盤ハーモニカの音は一瞬「coba?」(シングル「真夜中は純潔」のカップ リング「愛妻家の朝食」に参加)と勘違いする人続出?その後は、家庭のドロ ドロとした生活から逃れ、街中を自転車で回るパリジャン(?)を彷彿とさせ る。

i won't last a day without you

ついにCD化された「東芝EMIガールズ」(実は、ここに何故矢井田瞳 を含めないのだ?と思わなくないが・・・)極めてシンプルなサウンドの上で 2人がそれぞれの魅力を出し合っている。しかし、改めて聴くと宇多田ヒカル の声の存在感というの痛感する。(冗談抜きで今の日本人で一番では?)

黒いオルフェ

良くも悪くも、スタンダードでアクのないサウンド。この曲が単体で世の 中に単体ででることはまずない。そんな曲である。もし、コラボレーションの アルバムでこの曲が出てきたとしたら、まず彼女が歌うことはないだろう。そ ういう意味では価値があるかもしれない。

mr.wonderful

全体的に、森Diskは小野リサ的なサウンドがするのだが、それが一番顕著 な曲。筆者は何度聞いても曲のある一部分が小野リサ「Tea for Two」に聴こ えてしまうのだが・・・。音色的には一番スタンダードな感じ。参加ミュージ シャンの味見にこの曲は如何?

玉葱のハッピーソング

兄弟共演、とあえて最初に書く。椎名純平氏の曲を聴いた事がある方は (比較的)少ないと思うが(実は筆者もその一人^^;)、知らずに聴いたら 「誰?」と思うだろう。外人張りの兄とのデュエットで一番イキイキしている 彼女の姿が目に浮かぶ。良くも悪くも、明るく楽しいアメリカンサウンド。ア ンコールに、いきなり兄と一緒に現れて歌う、というのは本当にありそうだ。

starting over

どこをどう切ってもジョン・レノンの曲はジョン・レノンになる好例(笑) 実はキーボーディストがアレンジする時に(特にこういう曲)ギター抜きで使 えるパターンというのは案外限られていたりするのだが、森氏がなんとか彼女 の厳しい目をクリアしているのが面白い。オルガンでベンドを使う上手い見本。

子守唄

子供を産んだ彼女がこの曲を本当に子守唄に使っているかは定かではない が・・・。かつて、NHKの番組で世界的チェリストのミッシャ・マイスキー が子供たちを集めて、その子供たちが聴いていた子守唄を調べることによって、 音楽に触れてもらおう、という番組があったが、それをふと思い出す。音楽を 愉しむ者としては、自分の父・母が自分のための子守唄を作ってくれていたら、 それは最高に誇れるものとはいえないだろうか?


後日談。

椎名純平さん、というところを椎名桔平さん、と書いていました(苦笑) ご指摘して頂いた方ありがとうございます。

ずっと気になっていた木綿のハンカチーフの「どこかで聴いたことある感」 はなんだか「アニソン」を歌っているような感じがする、ということに気がつ く。↑で指摘した歌詞の部分を「ハクシ〜ョン大魔王〜♪」と替え歌してみる と分かると思う。

また、松崎ナオちゃんの声の聞き分けはゴスペラーズの5人の聞き分けの 100倍くらい難しい(苦笑)よく聴くと、比較的低音域で差があるような気 がする。低音域での声のひずみ感をチェック。

んでもって、木綿のハンカチーフ(またか)の中間の間奏のピアノ?の音 はレベッカ「White Time」のイントロで使われている音とまったく同じだと思 う。レベッカ土橋氏は、「あの音はミラージュ」と言っていたが、シンセの音 色の名前なのか、楽器の名前なのかは未だに分からず。(ここまで2002/05/26)

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