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ここでは、私の読んだ本に対する、感想や、とりとめのないメモなどが 書かれています。 ちなみに、オススメ図書には[*]がついています。 読んでほしい本、という意味であります。●がついているものは私がが所有し ていないという意味です。また、"->"マークの付いているものは別のページ ヘ移動します。 |
私の好きな作家さんに関する書評、情報がまとめてあります。同じ興味を お持ちの方はぜひこちらも御覧ください。各種情報、リンク要請歓迎致します。
申し訳ないですが、私が「何の本を読んだか」というのを忘れると言う、アルツハイマー予備軍なので、書評の予告を追加します。(2001/10/13)
少年時代は、貸本屋に丁稚奉公に出ていた。本好きで、夜遅くまで本を読 むので蝋燭がもったいない、と嫌な顔をされたという。
独立して古本屋になる。もうからない稼業とわかっていながら続けていた。 もっぱらめんくい(麺食い)で、おかずの選択に困る日々。蔵書を売るのをた めらったり、時には漱石の書を。古書店主とは商品を売るに売りたくない、そ んな人種なのである。
ある時、友人たちと雑談するための三畳の部屋を隠れ家として借りた。そ の時、古本屋の均一台から漁ってきた雑書を集めて「百円文庫」を作った。思 うと、あんなにも楽しかった読書体験は、あとにも先にもない、という。
古書の通信販売で短いコラムを書いてきた。これが次第に貯まっていき、 だんだんとエッセイ集の体をなしてくる。いつのまにか、評判を呼び、出版す ることになった。それからも文章を書きつづた。昔、井伏鱒二の文体を模倣し ようと鱒二の本を原稿用紙に書き写したこともある。こうして、「佃町ふたり 書房」が直木賞を受賞。一時店を閉じたこともあったが、今も古本屋を続けて いる。雅号は「芳雅堂書店」。
世界〜地図シリーズ。この本のすべての要は、序章の「紛争の本質は経済 闘争にある」というこの言葉に凝縮される。主な紛争、また耳慣れない紛争 (利権闘争)のことがこと細かく、また「百件は一聞にしかず」という言葉通 り、筆者の懸命な取材の元普通のメディアでは知られていないことが書かれて いる。そういう意味で、軍事関係者ならずとも、世界の動向を見守るべき人 (大統領・・・じゃない。。。国連?NGO?NPO?)は必読であろう。
そんなの関係ないや。という人も日本についての文章だけは眼を通してお こう。今の日本の生活インフラが如何に脆いものか、自衛隊がいかにダメな組 織かということがわかれば、何をやってるんだ政府は!、と思うはずだ。
「好奇心は猫をも殺す」ということわざがあるが、この本は、まさしく 「好奇心はピアノをも壊す」と言えるだろう(失礼)。だが、この本の中に詰 まっているのはまさしくピアノへの愛であり、その結晶と言えるだろう。
この本は、ピアノ購入から、その保存、メンテナンス、ピアノの再生まで 網羅した、かなりマニアックな本である。しかし、一生モノである楽器を買う のだから本の値段なんて安いものだ(?)。特にマニアックなのは、やはりピ アノを分解したり、調律したりする部分であろう。私はパソコンを使って簡単 に調律できる(もちろん大変な作業だが)というのは参考になった。ただ、あ まり細に渡っては述べられておらず、最終的には調律師まかせになっているの が残念である。(実際どれだけの人間がするのか、ということを考えると当然 なのかもしれないが^^;)
また、各ピアノメーカー(日本ではヤマハ、カワイを始め中小メーカーか らスタンウェイに始まり手作りのピアノメーカーまで)のピアノの価格、音色、 クセなどが細かく記されている。アップライトピアノに特化して言えば、これ ほど細かく書かれている一般書はあまりないようにおもわれる。ここだけでも 十分資料になるだろう。
さらに、国内でのピアノの良店を紹介している。上京する前にはこの部分 をコピーしておくといいかもしれない。そういえば、浜松で一度のんびりした いものだなぁ(ひとりごと)
世界の旅・・・シリーズですよ・・・ね?タヒチ辺。私はどうもタヒチと いう場所の魅力がわからないのだが、残念ながらこの本を読んでもイマイチよ くわからなかった。
それにしてもタイトルも何故「虹」なのかよくわからない。レストランの 名前だから?最後に虹が出てくるから?それは故意に書かれていたとしていた らあまりになさけないし、故意でないとしたらその中途半端さがなんだか妙な 違和感を感じさせるのだった。
結局、1つ1つの言葉の重みが軽くなっているのでは、と邪推する。こん な書き方は何だけど、急に密度が薄くなったのを感じる、特に言えば人と人と の密度、〜誰かと誰かが強く求め合ったり、拒絶したりということ〜が薄くなっ ていると感じた。ただ、密度が薄くなって、それだけ目を通しやすくなった、 ということはあるかもしれないが、それは私の望むところではないので、新作 に期待をしようと思う。
注目点は言うまでもなく装丁。書店で見た時は腰を抜かしました。田舎の 本屋だから縦にまだらに並んでいたが、平積み4本だと爽快な風景でしょうね。 春菊さんの本は時折イリーガルなサイズだったり、面白い装丁があったり。こ れはうれしくもあり、たいへんでもあり(苦笑)カバンの中に入れておいたら 髪の毛がバラバラバラ〜と落ちてるんではないかと思ってしまうのです。
さて本編。3部に分かれていて、第3子妊娠中連載、書下ろしまんが、第4 子妊娠中のことの書き下ろし、となっている。まず第1部。春菊さんには正直 悪いのだが、彼女が充実している時のエッセイというのはあまり面白くない。 文体がぬるま湯のようでひきしまりがなく、ダジャレも不快。
2部。短いが、書き下ろしまんがは面白い。私は実のところ、繁殖シリーズ で特に好きなのが1巻+2巻の息子さんに関する書き下ろしまんがである。子供 を売り物にするな!という声もあるかもしれないが、結局家庭だったらビデオ に収めるところが作家、漫画家であるが故にこのような形になるのはいたしか たないと思う。プライバシー等の線引きは彼女の家庭、母子間で行われるべき であると考え、ここでは言及しない。が、しかし私はこういうまんがが読みた いのである。
第3部は微妙なところ。彼女のイライラが出ているのは面白いかというと一 概には言えない。ダイレクトにイライラが妙に伝わってくるのはちょっと読み 手としてつらい。が、自分の周りの書く出来事の描写は非常に分かりやすく、 スラスラ伝わった。ただ、挿絵に大きく頼っている点は否めない。
いつか、漫画家であり、作家であるからこそできるような本が出来ないも のかと期待する。(*1
.1) そもそも漫画のストーリーが作家業の部分に当たるので、まんがを読め ばよい、という指摘はその通りであるが、その境目スレスレを狙って欲しいも のである。ただ、そういう作品が既出である可能性は高い。がそのハードルを 越えられる女性は内田氏であると思っている。
有名なる「死体は〜」シリーズなのだが、ちょっくら今回はトーンが違う。 基本的に氏の見てきた事例をケーススタディーとしているのだが、今回は毒殺、 つまり人が人を殺すということが事例となることを前提として書かれているの である。個人的に読んでいて、最初のどうしてこのような毒で死ぬのか、等々 の知識はほうほうとうなづけるものがあるのだが、ある文章の結びとして、
p68.自分の命が大切であるのと同様に、他人の命もその人にとってはか けがえのない大事な物である。一度しかない人生。命の大切さを再認識して欲 しい。
というのがあったり、同じように「常識的に考えずともアタリマエだろう?」 というような言葉で文章がしばしば締められているのである。これは私にとっ ては失笑を禁じえない、また、「クサイ」と思わずにはいられなかった。
もちろん、現代社会が病んでいる等々言われ、様々な事件が起きているが 故に、アタリマエのことをあえて書いているのかもしれないが、これをわざわ ざ監察医であった上野氏が書かねばならないのか?というのに非常に疑問を感 じる。私は、氏が積み重ねてきたデータの上で見つけ出した社会的発見は高く 評価するが、このような安っぽい言葉は評価しない。
メル友の人に薦められて買った本である。最初のうちは「なかなか面白い わい」と思って読んでいたのだが、だんだんつまらなくなってきた。実は作者 すらも面白くなくなってきているのだからそうなって当然なのだが(苦笑)筆 者が経験・伝聞してきたクスリにまつわるエピソードである。そもそもまとま りがない。どんな本で連載されてたんじゃ、というくらい各章の長さが違うし、 一貫性をほとんど感じない。ちょっとダマされた気分である。
それだけではなんなのであえて書くと、面白いのは、「中島 らも」という 人間のその人とガラであろう。私はラジオで氏がしゃべっているのを聞いてい るが、まさに文章としゃべりが同じなのだった。氏がしゃべっているのを想像 しながら読むとなんだか、妙な「プププ」といったおかしさがある。
だがやっぱり自殺できなかった男、中島 らも(自殺されていたら、文学界 にとって大きな損失だと思うが)氏らしく、ドラッグに関しても中途半端だ。 やっぱりそこがこの本をつまらなくしている最大の要因だと思う。
この本の中で、「作家・柳美里」は死んでいる。いや別の言葉で言うなら ば、すべての気が抜けてかろうじてぽつぽつと、池の上にある言葉という踏み 石の上を進んでいるような状態なのかもしれない。福田和也氏曰く「筆圧の高 い」と言われた彼女の筆圧の高さというのはすっかり影を潜めている。しかし、 ここで彼女の筆圧が必要なのか、といえば決してそうではないのであった。
何はともあれ、この本の主役は東由多加氏であると思う。すべては柳氏の 回想の中に存在するのだが、その存在感というのは他には変えがたいように思 える。そして、サブキャラクター、言い換えれば、適切なコメントを送り出し ている人が多々いる。中島みゆきさん、最相葉月さん等々、この一連の作品を 料理に例えるのなら、あえてデザート、という見方もできるかもしれない。東 氏がメイン、その他の言葉がトッピングというべきか。
いくつか残念だったのは、連載であることを意識せざるを得ない部分があ るところ(代表的な部分は、葬儀が戯曲形式で描かれている部分)であろうか。 いまいち、話が離散的であり、小説としての統一感を欠いているのは惜しまれ る。しかし、次への作品への繋ぎとしては、非常に良くできていると思う。一 番上手くできているのはやはり、最後のエピソードだろうか?ここからどのよ うに展開するのかが楽しみである。
最後に、気に入っている部分を引用。
p154.「最相さん、ぼうくはそうは思いません。主人公が最後にかけらを棄ててしまうという終わりかたには疑問を持ちます。だって、最後の最後くらいは自分にぴったり合うかけらが見つかることを信じて生きていたいじゃないですか。いつの日か完全な自分になれる、どこかに絶対的な幸福が待っている。そう思うから、つらく苦しい毎日でも生きていこうと思えるのではないですか?」
p176.妊娠中に中島みゆきさんに手紙を書いたんですよ。そしたら<あから さまで失礼ですが、費用はまにあいますか。うつの気持ちでいる人に、がんば れと言ってはいけないといいますが、がんばれ 手伝うぞ なら言ってもいい と私は思います>と返事がきて・・・
この本を読んでいた時、弟に「何でそんな本読んでるの?っていうか、そ の本どこで買ったの?」と言われた。そりゃそうだろう、私も内心思ったので あった。(どこで買ったかは忘れた。多分店頭販売。)書店チェックで珍しく 私の目に止まった「ヤクザ」というアングラな組織について書かれた本。
読んでいると・・・やけにヤクザ寄り・ヤクザ贔屓な文章であることは否 めないが、そういう観点で「慎重に、実際の法などを理解した上で」書かれて いる文章であると言える。(実際、「暴力反対」というデモンストレーション の多くは、感情的であり、一貫性に乏しいことが多い。)
この本の筆者同様、私もこの本を読んで是非理解してもらいた、と思った 事は、「ヤクザ」というのが完全な暴力組織ではない、ということである。そ のため、既存の欧米のマフィア的無差別な暴力集団としてヤクザを取り扱おう とした暴力団取締法の問題点が顕著になっているのは否定できない。
実は暴力団(ヤクザに非ず)というものがグローバリズムの申し子である とするならば、反グローバリズムという見地からすれば、ヤクザ、というもの が欠かせないのも認めざるを得ないのではないか、と思うのだった。ただし、 グローバリズムいうものはこの先我々が避けて通れない道であると思う故、安 易な反動は危険であることを付け足しておく。
有事法制だ、盗聴法だ、とやけに日本の再軍備・・・はほぼすでに完了し、 それをいかに運用するか、ということに重点が置かれ始めつつある昨今、表に 出てくる組織の中で一番謎に満ちた、一番何をやるかわからない組織について 学んでみることはまんざら悪いことではないだろう。
ただ、この本を読んでみて実際学べることはごく基本的なことが多く、しっ かりと調べれば分かることが多いこともわかる。もちろん、歴史的な背景等々 は学ぶ以前にしっかりとまとめられたものがあれば、それを読むのが一番の早 道であることに変わりはない。無理に買って読まずとも、公安、という組織に ついて若干調査をすれば立ち読みでいいのではないかな、と思うのだった。
個人的に面白い、と思ったのはNシステム関連の資料であろう。この真偽 性についてはあまり言及しないが(ちなみに、私は、実際地図を見てNシステ ムのカメラを探し出した(笑))、こういうものが、一体どのように運用され ているか、ということがマメ知識的にわかるのは面白い。昔、PHSの基地局を 実際目で見て、〜社製が〜にある、といった地図を作ることが流行って(?) いたが、同様なことをしてみるのも面白いかもしれない。
また、あくまでも公安も利権の上に存在する、という観点は注目すべきで あろう。彼等も生き残るのが大変なのだな・・・と思えば優しい目で見てあげ ることが・・・できるわけがない(笑)。
傍受活動について少しだけ。盗聴法が運用されたことによって、ほぼ合法 的に傍受活動は現時点で行われている、と断定しておこう。ただし、これが上 手く運用されているか、というのは謎である。実際、エシュロン(アメリカが 中心となって行っている巨大傍受プロジェクト)も実際にウォッチできている データは15%程度だという。(個人的にはそれでも関心してしまうが)常に脇 を固めて、いざという時に備えておくのが賢明だろう。
雨宮処凛嬢の処女小説。暴力恋愛、というタイトルから彷彿させられるイ メージからはだんだん程遠くなっていくような気がした。言い換えれば、暴力 を緻密に描くのではなく、暴力をデバイスとすることによって、現代の多くの 人間が抱えているであろう問題を描写しているのである。
この一冊を極端に自意識過剰で、常に回りのことが気になってしょうがな い私としては、共感しつつ、また、嫌悪しつつ読んだ。つまり、かなり読み手 を選ぶのではないのだろうか、と思うのである。健康第一!などと言って、生 徒をシゴくことを至上の生業としている人間には嫌悪すべき1冊かもしれない。 逆に見れば、その対にいる人間の需要を掴んで離さないように思われる。
最初の原稿を見ていないので如何とも言いがたいのだが、全体的に通して みるとなんだか非常に読み心地が悪い。あくまで「全体を通して」ということ であって、部分的に見ると非常に秀逸である、と思わなくもない。巻末に短編 小説に大幅加筆、という一説があったので、むしろ彼女には短編をいくつか書 いてもらって、そちらの方にこの元になった短編を掲載してもらいたい、と思 うのだった。
侠依存ということについてひとこと。天文学で「トレーサー」というもの があって(記憶ウヤムヤです。ご存知の方、ご指摘ください)、それは共に巨 大な質量を持った星なのだが、それがお互いの重力の作用で共に同じような動 き(回転)をしつつ、電波を放つ、というものなのである。侠依存という言葉 面からすれば、非常にこのことを彷彿とさせるのだが、実社会ではなかなかそ うならないのが残念でならない。
実は、この本は1ヵ月以上前(韓国に行く前)に読んでいる。ほぼ再読をし ていないにも関わらず、書評が書けるというのは、それほどアクが強いのか、 とてつもない印象深い本だという証拠であろう。
読んでいて思うのは「これを恋愛小説と呼んでいいのか?」ということだっ た。私には恋愛という名を借りた社会への挑戦・問いかけのように思えた。も ちろん、恋愛の小説なので(?)、恋愛がメインストーリーになっているのだ が、あくまで柳さんの恋愛感、もちろん恋愛は2人だけでは成立しないので、 その環境感が語られている。
連載だったということもあり、最初の部分は名前が交錯するあたりが、劇 作家であった彼女らしくも思うが、最初のハードルになっているかと思うと残 念。しかし、読んでいればかならず面白いと思えるはずである。人物名で頭が 混乱しても読みつづけてみよう。もちろん、私は非常に面白いと思ったが、こ んな価値観は認められない!という方々もあると思う。何かおかしいと思った ら途中で読むのを止めたほうがいいのかもしれない(どっちやねん。)
ところで、「唯幻論」というのをご存知だろうか?私も大好きな岸田秀氏 が唱えている理論である。柳さんは岸田氏と面識があり、唯幻論者でもある。 あいにく私は事前に岸田氏のことを知っていたから、1つの見方しかできなかっ たが、ご存知ない方は岸田氏の著書を読んで、再度この本を読んでより楽しめ ると思う。
また、この小説はドラマ化され、現在はDVDが発売されている。色々書いた り、音を出したり、ビデオを撮ったりする立場にいると、この話は非常にドラ マにしたくなる、と思う。(私がそうだったのだ(w。ドラマ化されたのに気 がついたのは読後だったが・・・)しかし、この価値観を脚本化し、表現する 俳優は稀有であると確信している。もちろん、この先DVDを買い、観て、評論 を書く予定である。もし、満足できなかったら自ずからメガホンを取るか? (笑)
気がつくと、アフガン情勢のおかげで(せいで)、以前書評を書いた、 「民族世界地図」、 この本、「世界紛争地図」の3書を書店でよく見かけるようになった。グッド タイミングだったのか。3書の著者は、思いがけない収入に喜んでいいのか、 困っているだろう。
これを読んで私の宗教というものに対する考えは変わったのろうか?答え は、「変わらない」。むしろ、より宗教の嫌な面が見えてきた、というべきか。 民族、という言葉と比べると、宗教、というものは比較的明確かつ、タイトな ものに思える。存在を問う時は、「あなたは〜を信じますか?」ということで 片付けることが「ほぼ」可能だからである。ただ、本書を読めば、いかに宗教 というものが大雑把に語られているか、というのがすぐに分かると思う。存在 を明確にするのは、その大雑把さが取り除かれた上での話である。
また、読んでいて非常に痛感するのは、宗教というものが、いかに使い・ 使われているか、ということである。使われているだけでなく、我々が結束を 深めるために「使っている」。また同時に、使っていると思っていた物が、使 われている、ということがあるのである。
民族、宗教、そして、国境(州境等々)を意識すれば、非常に外国人を理 解するための良書であると思う。もちろん、「紛争世界地図」も購入済みなの で、こちらの書評も待て。。。
「自慢じゃないのか」と思ったのが正直な所。ノウハウ本のようで・・・ ノウハウ本ではない。非常に中途半端な本です。評論家・エッセイストとして やっていこう、という人には参考になるのかもしれませんが、私はそれほど再 読したいという気持ちになりませんでした。(*1)またもって、値段が高い。内 容的には新書がピッタリで、類書もあるのに何故こんな値段設定なのか、と出 版社の考え方に頭をひねりたくなります。
ただ、読みやすいのは確かなので、ナビゲーションをしながら疑問点を書 き上げましょう。まず、読書をするのに目標設定をする必要があるのか?とい うこと。ひょっとしたら我々は無意識のうちに目標意識を持っているのかもし れませんが、わざわざ自分にとって意味のあることだけを選び出そういう考え 方にはいささか矛盾を感じずにはいられません。「作家の値打ち」もこんな風 にして作られたのでしょうか?
本などの知識収集術に関しては、かなり当たっていますね。自分に合った 本屋・古本屋・評論家・...etcをチョイスするのは最良の生きる術だと思いま す。そして、本を読むときに本を折る、という作業。これはいただけません。 本は愛でるもの・一期一会。そういう割り切りができない人が大多数であるし、 捨てることを薦めても捨てられない人ばかりであると思います。
かなり飛ばして、本を写生することに関して。筆者はノートに書き写すこ とを薦めていますが、昔の文筆家の場合は原稿用紙を使うことをオススメしま す。直木賞作家の出久根達郎さんが井伏鱒二の本を書き写していたというのは 有名な(?)話。最近の作家さんはほとんどワープロで書いているので、その 効用もどうなることやら、と思いますが。
そして、筆者は文筆家の文章の分析を薦めているのですが、自分自身の分 析はなさらないようで(笑)読みやすい反面構造が散漫になっているように思 えます。まあ、かの福田氏ですから、ノウハウを徹底的に分析した一冊が出版 されるのを期待しましょう。ただ、この本は、そのツナギにはちょっと甘いで すね。
*1) 実は私は大の「超整理法」フリークなのであります。私は、ノウハウ 本、というものはそれを身につけるため、本を部分的、もしくは1冊まるごと 再読する必要性がある、と考えています。つまり、読み直す気にならない、ど うだったか確かめる・考える必要性がない、というのはたいしたノウハウでは ないと言えます。実際の所、私は「超整理法」シリーズを幾度となく再読して います。
ところで私はマクドナルドが嫌いなのですね。どこが嫌いかというと、特 にCMですね。子供と動物を使うのは業界の常套手段ですが、動物はハンバー ガーを食べないから子供をターゲットにするのですね。「パパ〜、マック行こ うよ〜」といった感じのCMを見るとヘドが出そうになります。しかし、どう いうわけか、この感覚を理解してくれる人は皆無で、少しさみしかったのです ね。
変な書き出しですが、ちょっと斜に構えれば見えてくる大企業の裏心、と いうものを理解するための良書。。。というか、企業批判をする本というのは 少ないのですね。CMや企業のプレスを鵜呑みにするのであれば、このような 本を読むべきでしょう。
ファーストフードのフランチャイズの店が、どのように出来て、どのよう に社会に侵食していって、そしてどのようになっているか、という事が「ジャー ナリスト」の視点で書かれています。私は、訳者のせいではないかと思ってい ますが、かなりぶ厚く、読みやすいとはいえない文章なので、つまらないと思っ たらバンバン飛ばして読むのがいいのではないかと思います。でも、だいたい 皆、似たページからじっくり読むようになると思います。
みんなの手の動きが遅くなるのはどのへんか、というと、実際の現場では どうなっているのか、ということが書かれている個所だと思います。ネタバレ の可能性があるので、詳しくは書きませんが、かなり許容範囲の広い(なんじゃ そりゃ)私ですら、読んでいて気持ちが悪くなるくらいですから、よっぽどな のだと思います。本当に、今同じ時間を共有する他の土地でこうなっているか と思うと、吐き気がします。
これだけではちょっと書評としての価値がないと思うので、ネタバレにな ることを承知の上で、印象的だった一文を引用します。
>アメリカの農業を集中化させてきた大手アグリビジネス企業は、まるでソ連 >の人民委員のように、自社の方針への批判を抹殺しようとしている。
こういうことです。これは、今の日本もまったくもって同じ構造を持って いる。抹殺するための方法も然りで、政治がらみの利権を使って、自分たちは オイシイ汁をすすっている、というのもソックリ。やっぱり日本はプチアメリ カなのかなぁ、と思います。
また、この本を読むにあたって、アメリカという国の地理的特長を考慮に 入れる必要があると思います。(これは訳者が念頭に入れておくべきだと思う のだが・・・)アメリカは、1次大戦中のように戦争が起きても、自分の国は なんともないから、無視、という態度を取ることができる数少ない国です。 (メキシコか、カナダで紛争が起きれば別ですが)そういう意味で日本と似て いるのですが、日本の場合、格安の労働力がない、正確にはあっても限界があ る。日本国内ではどうあがいたって最低賃金として5ドルは必要でしょう。し かし、アメリカはメキシコに面している、移民を受け入れているという条件か ら、自国で格安の労働力を手に入れることができます。日本はその面、労働力 という点ではアメリカほどの無茶はできないのですね。
しかし。国内生産しなくてもいいもの、例えばおもちゃの類はほとんど中 国で生産されていて、中国でのその環境は人権問題になりえるほどの劣悪さと 聞きます。日本では、国内で問題を目撃できない分、逆にフィルタリングされ ていると考えて良いでしょう。実際に現場ではどんなことが起こっているのか。 それを目撃する代わりに、ちょっとでもこの本の確信に触れてもらえれば、と 思います。
詠美お姉さまファンの知人曰く、「この作品は詠美さんじゃないような感 じがした」とのことである。詠美さんの作品を読むのは・・・なんと2年ぶり。 感じがつかめるかな、と思いつつ読み始める。
詠美さんの愛でるキャラクターは色々な種類(向きとも言う)のベクトル を持っている。ただ、無造作に放たれているのではなくInnocentという平面を 描くような・・・つまり一貫した美学の上に構築されたキャラクターなのであ る。ただ、その一言で片付けるにはあまりにも惜しい。そして、この作品は、 とても高貴(Noble)である。ベクトルの1つ1つが電気を帯びているならば、 そこから気品と言う磁界が発生し、すべての流れがごくごくシンプルな字句に 還元される。(これは誉めているのか?)
短編集「姫君」は、昔から変わらぬ(と思う)詠美さんの、Innocenceと Novleの流れの上にある、良質な作品集である。どうしても「僕は勉強ができ ない」をふと思い出してしまう「MENU」。芳醇な言葉の中にある、1本の きりりとした鋼のような「検温」。全文暗記して、戯曲を演じたくなる「フィ エスタ」。「ラビット病」的な「姫君」。そして、どこか宇都宮を彷彿とさせ る(?)「シャンプー」。
今までの流れ、少なくとも私の記憶にある限り、詠美お姉さまの本質はな んら変わらないように思えた。いや、むしろ、新たな、次なる物を探っている ように見える。次の作品を待って、いや、過去の作品を読み直す時期に来たの では、そんな読後感だった。
こちらはお客編、ということで、風俗へ行く心得が書かれているのだが、 よくよく考えてみると実はとても話は簡単で、自分の恋人と肉体関係を持つ時、 相手を傷つけないように、お互いの気持をシンクロさせるために必要なことを すればいいのである。ちなみに男と女は貢ぎ貢がれつつ、というのが私の理想。
さておき、風俗に初めて挑む人間にとって一番の心配事は「店に入ったら 怖い人にかこまれて、身包みはがされたらどうしよう」ということでないかと 思う。その点でもしっかりとしたAnswerが書いてある。極めて単純なことだが。
風俗に慣れてきたら、ステップアップして女の子と色々な楽しみ方をする ためのノウハウも書かれている。もちろん、店には通わないといけないし、指 名もしないといけないので、当然お金がかかる。貧乏な、特に学生は真剣に読 まないほうがいいかもしれない(笑)
巻末には、風俗店店長の座談会が掲載されている。これは風俗店のみなら ず人をウリにするサービス業に共通する悩みでも、アイデアでもあると思う。 風俗に興味がなくてもここだけでも参考になると思う。結局、従業員がいて、 女の子がいて、お客がいて。つまり、すべては心理戦だと思っていい。相手の 考えを読む、そしてうまく誘導する。彼らのこの1点についての試行錯誤が詰 まっている。
まず最初に感想を書こう。あんまりおもしろくなかった。悪いけど。ただ それには理由があるので最後まで聞くように。私はこの本を読む前に、松沢氏 の著書、 松沢 呉一「風俗就職読本」 を読んでいる。はっきり言ってほとんどネタかぶり、というか追加項目として この本があると言ったほうがいいかもしれない。主な追加項目としては、実際 のハプニングの例を紹介してることと、店のもっと深い内情である。もちろん、 お客側が知っていたほうがいいかもしれない情報もあるので、行ってみよう、 という人は次に紹介する、「お客編」だけでなく、この本も読んでいた方がい いだろう。また、就職してみようかしら、と思う人は「風俗就職読本」も読ん でおいた方がいいと思う。(むしろ「就職読本」は文庫で安いので、その気に なったらこの本を見てみるといいかもしれない。
巻末に菜摘ひかる嬢と斉藤綾子氏との対談が掲載されている。これは「か なり」面白い。面白いといっても「知的好奇心」というか「人類文化学」とし てか(笑)。ちなみに私は同性愛、多人数プレイ、SM、ドラッグクイーン等々、 なんでもアリであるので(笑)このような人がいるのだな、と思うとちょっと安 心しつつ、実際その場に遭遇してみたいものだ、と思うのでした。
かなり前に読んだ本です。蔵出し、というわけではなくて、単純に書評を 書くのを忘れていたのでした。前に書いた(答えた)「活字好きさんへの10 0の質問」で偶然思い出し(*1)、はて書評は書いたかしらん、と思いふと調べ たらなかったので、急遽書くことにしました。
さて内容ですが、両氏と担当佐藤がいろいろな無作為・半作為的に選び出 した日本語および、各種外国語について語る、という極めてシンプルなもので ある。私はあいにく、川崎氏のことをよく知らないのだが、吉田戦車というネー ムバリューは誰をも引きつけてやまないものだと思う。ここで吉田氏は「いつ もの」と言うべきか「またしても」というべき「確信犯的」トークを繰り広げ ている。元々あとがき等から見る吉田氏の文体とさほど違わないのだが、読ん でいてムズかゆいものを感じるのは間違いないだろう。
しかし、1つの言葉に集中してその言葉についてだけひたすら考えるのは 一種の、禅というか、修行というか、拷問というか、そんな感じがしませんか? 例えば、ひらがなの「す」という文字を紙に大きく書いてみて、「す」という 文字はこれでいいのか?、ということを考えてみるとなんとなくわかると思う。 なんだか、自分のやっていることの愚かさというか、知識・知覚というものの 危うさというか、そういうことを感じずにはいられないと思うのだが。(ちな みに私は、そういう場合には色々なサイズの「す」という文字を書いて、真剣 に「う〜ん・・・」と悩むタイプ。
通勤電車等で、恋愛小説を読んで涙を流している所を見られたくないよう な人にはうってつけではないだろうか。また、文体を知りたいという方のため 清水義範「永遠のジャック&ベティ」に似た違和感を持つ、ということをつけ くわえておく。
本屋で一目見た瞬間手に取り、即座に購入を決意。(そういえば完全自殺 マニュアルが発売された時はずいぶんと問題になったが、どうしてこの本は平 積みで売ってあったのか?これは時代が良くなっているのか悪くなっているの か・・・)溜まっている本をすっ飛ばして、一気に読みきってしまった。完全 に自分の好みのツボをことごとく突かれてしまった。しまった(笑)
内容は違う筆者、違うコンセプトを元に書かれているが、どうしても、ど う読んでも、どう考えても、「完全自殺マニュアル」を補完しているとしか思 えない。これが不思議でならなかった。特に文体が似ている。性別すら違うの に、と思ってしまう。こればかりは、不思議で不思議でしょうがない。もしか するとキーは、同一出版社、同一編集者であることかももしれない。ただし、 私は出版業界に疎いので編集者が著作にどれほど手を入れるか分からないが、 それにしても似すぎてはしないか?
しかし、彼女と鶴見氏(「完全自殺マニュアル」著者)の間を大きく隔て るものがある。それは、死という方向へ向かう強力なベクトルだ。もちろん鶴 見氏もいつ自殺してもおかしくない状況と言えなくもないが( 鶴見 済「無気力製造工場」参照)、 一般的な目から見れば彼女の方の経歴の方が圧倒的にすざましいと思うはずで ある。 ( 雨宮 処凛「生き地獄天国」参照。)
彼女の経歴を知れば、いや、知らなくともこの本で非常に力が入っている部 分はどこなのか、どこが一番リアリティのある情報かわかるはずである。(ネ タバレになるのであえて書かない)そこには、本当に価値のある提言、内容が 詰まっている。是非とも見つけ出して欲しい。
さて、内容をもうちょっと詳しく説明する。本書は2章に分かれていて、1 章が基本経理編、2章が手段別経理編、となっている。1章は「完全自殺マニュ アル」では省略されていた「死んだ後にどうなるのか」「未遂の場合どうなる のか」「死ぬことによってどのような影響がでるのか」ということが書かれて いる。ただし、「自殺されて残された人の心のケア」なんぞが書かれていると 思うなかれ。この本はあくまで「コスト」。つまり、資本主義の中心である 「お金」という定規の上で語られているのである。とりあえず、自殺しようと 思っている人は1章だけでも目を通しておくことをオススメする。2章は、「完 全自殺マニュアル」の補完、と言うべき部分である。とりあえず、クスリ事情 など、ずいぶんと状況が変わっている部分があるので(特に、クスリ、飛び込 み、自傷の3項目)自殺する人は余裕があれば2章も読んでおこう。無駄金を使っ たり、胃洗浄(著者は胃洗浄経験者であることに注意)されたりするのは嫌で しょう?
結論として、この本は非常によくできていると思う。また、すべてを「お 金」という目に見える「数値」というもので自殺に対するアプローチをしてい ることは、ひょっとしたら世間一般では衝撃的なのかもしれない。(*1)ただ、 数字で割り切るようなアプローチが徹底されていないのが惜しまれる所だ。そ れを抜きにしても、十分オススメできる本であるが、あえて印をつけなかった。 なぜかというと、私が処凛嬢ファンである以上に大の鶴見済氏のファンであり、 氏の「完全自殺マニュアル CompleteEdition」(*2)が出版されないものかと考 えてしまったからである:-)
*1) : これは私が世間一般との感覚がズレていることを自白しているので ある。私にとって人間の行動メカニズムは全て脳の活動−コンピューターと同 じ、プログラムの1種類にすぎない−と考えているので、数字で全ての物事を 判断するのはごく自然なことなのである。例えば、単純に私たちが何か2つの 物、どちらがいいか比較する時に、好みで選んでいるような気がしているが、 実際は自分の脳のプログラムに視覚野から入った情報をインプットし、数値化 し、それを単純に比較しているということにすぎない、ということである。
*2) : 本当は、「完全自殺マニュアル」自体、改定を重ねてゆくべき本だ と思う。ちなみに、仮に自殺者が全員1冊づつ買っているとすれば、それだけ で生活できる気がするが・・・。「完全自殺マニュアル」が発売されてから10 年目はもうすぐそばに迫っている!
私は色々と音楽経歴を経ているのだが(これについてはそのうち音楽のペー ジで書こうと思っています。)、もはや自分がロックではない、とつくづく思 うのである。精神的にはむしろパンクで、音楽的にはポップス−もはや死語な のかもしれないけど、ポップ、という言葉の響きが好きなのでこの言い方に固 執している−だと思っている。だが、どいういう訳かしばしばロッカーに憧れ、 ロッカーの本を読むのである。
ちょっと長いマエオキで申し訳ない。まず、この本の著者をご存知ない方 も多いと思われるので軽く説明を。さまざまなバンド活動を経て「パール兄弟」 というバンドで実質上メジャーデビュー。独特なサウンド・歌詞で一部に熱狂 的なファンを持つ。解散後、現在はソロで活動(のはず)。またタイトルにも ある通り、バンド活動をしながら歯科医を続けるという常人には理解不能な一 面を持つ。まあ、こんなところで。
さて、本書はロッカーと歯科医を兼業しているが故の日常のヘンなできご とをメインにしたエッセイである。巷にロッカーの生き方の本はあふれている ので、むしろ歯科医としての苦難が目立つ。ロッカーなのに(という言い方は おかしいが)むしろサラリーマン的にマジメで繊細な筆者が、ロッカーである 故の歯科医業の苦難は思わずニヤニヤしてしまう面白さである。大学時代、サー クルが大所帯なこともあって多くの医学部生を見てきたが、その面白さがいく らか伺えるのではないか、と思う。
しかしいかんせん本が古すぎる・・・。挿絵は岡崎京子(今私がこんな本 を出せるとしたら絶対安野モヨコ先生にお願いしたい。)、まだファックスが 一般家庭に普及していない頃、そして、フリーターという言葉が生まれた 頃・・・。そんな、懐かしい時代の形跡としてきっとこの本は私の本棚で眠り に入ることでしょう・・・
最後に一点だけ。2足のワラジ、フリーター、という点で氏は森毅氏と似 ていることを指摘しておく。
時々、小説を書いてみたら?と言われることがある。まあ、これだけ書評 を書いてるのだから(少ない?)まあ、そんな話があっても仕方ないな、と思 う。しかし、しばしば私の創作意欲の障壁になるのが自然の美しさである。人 類にとって無限とも言える存在、「宇宙」(世界、という言い換えも可能)の 法則やメカニズムを見ているとなんとも言えない無力感を感じてしまうのであ る。
さておき、前に紹介したダニエル ヒリス(著) 倉骨 彰(訳)「思考する機械コンピュータ」と同じように、宇宙研究のトップラ ンナーが語った宇宙の最先端の情報である。(あくまで、「ここまでわかった」 というのではなくて、「こうではないだろうか?と考えられている」という所 で止められている所が非常に潔い、と思う。)最先端に立っている人間が自ら の理論を平易に語ってくれる、というこんなに素敵なことがあるだろうか。理 解できれば、淡々と勉強させられている学問というものがバカバカしくなるか もしれない。
さて、内容について。かなりネタバレ的な書き方をしているので、まだ読 んでない方は先に読んでおくことをオススメする。まず、この本の一番のウリ、 として広告されているのが「イラスト・図版がたくさん入っていて、わかりや すい!」ということなのだが、図版の大部分は無意味である(苦笑)。一応理 科系だった経験則からいくと、普通、色々なことを考える時、必ず頭の中だけ で考えるのではなく、黒板に書いた数式や、グラフ等を、ぽかーん、と眺めな がら(もちろん頭だけで考えることもあるが)考えている。そういう観点から 行くと、自分の思考過程をメモするのに使った図版を載せるのには非常に意味 があるが、多くの図版は「子供だましの余計なお世話」のように思えた。ただ、 載っているだけならいいのだが、妙に読みにくい場所があったりするので、文 庫版(?)の時には改善されることを願う。
1章。アインシュタインについて。やはり、一般相対性理論抜きに宇宙を語 ることはできない、というだけでなく、一個人としてのアインシュタインの賛 歌として描かれている。
2章。いきなりここから急に難しくなる。相対性理論と対(?)と言える 量子力学から初めて、この先の宇宙論を語るのに必要な部分の説明がなされて いる。が、これは、かなり難しい。私が若い時流行った「超ひも理論」などは 数行であっさりと説明されている。(実は1章の本質もものすごい難しいのだ が)「超ひも理論」で止まっていた私の頭にはこの章は驚きの連続でもあった。 ちょっと物理をかじった人はちょっと見てみるのもいいかもしれない。ちなみ に私が一番驚いたのは1/2スピンの存在や、ブラックホールのエントロピーが 計算可能である、ということだろうか。
このへんまでで分かるのは、ホーキング氏は宇宙を説明するための美しい 数学的モデルを求めているのであり、無理矢理理論を作ろうとしない所である。 この点には非常に共感できる。彼には「現実を見ろ」という説教はまったく無 意味である。なぜならば、彼は誰よりも現実にシビアなのだ。
さて、3章。ビックバンについての解説。ビッグバンの解説をした本は多 いが、その始まりと終わりについて触れた本は少ないのではないだろうか。 (多分、ほとんどの本が「始まりも終わりもない」という仮定で説明している のではなかろうか?)そして、「世界には複数の歴史がある!」ということに 触れ、我々が宇宙のなかで偶然生まれたラッキーな(?)存在であることに触 れている。
4・5章。タイムマシンの可能性についての解説。普通ならば「くだらない」 と飛ばしそうなところを真剣に考えているところが氏のユニークな所か?現実 問題としてだけでなく、我々の世界だけでの存在可能性でなく、異世界での存 在可能性に触れているのは興味深い。
6・7章では、現実世界の観点から見た未来予想、理論的な観点から見た 未来予想が提唱されている。
だんだん書評が章を経てゆくにつれて短くなるのは、やっぱり理解するの が難しいからである(^^; 勘弁していただきたい。もし、私が宇宙物理学の大 家にでもなることがあれば(ないない)これを超える1冊を書きたいと思う。
愛しの春菊さんが「責任編集長」をしている本。いったい本屋のどこを探 せばいいのかわからなかったので、結局注文した。ささーっと目を通して、す んなりと読める気がしたから、溜っている本を飛して先に、仕事中に読んだ (笑)。これを見ていたお客さんは何を読んでいるのか不信に思ったに違いない。
さて、基本的に春菊さんが書いたもの以外は委嘱、というか寄稿、という 形と思えばよいであろう。見ていると、今までよく見えていた春菊さんの人間 関係以外の所も見えてきて面白い。一番以外だったのは吉川ひなのだろうか。 読んでいると、内容の密度差、というのが非常に気にかかる。どうしても近刊 の「私たちは繁殖している4」のようなテンション の高さを要求してしまっていることに気がつく。(逆に言えば繁殖シリーズが いかに優れているか、という証拠でもある。)。
中でも内容が充実しているな、と思ったのは、対談(木野花x宮本大誠、キ ム・ミョンガンx内田春菊、みうらじゅんx三上市郎、岸田秀x斉藤学x内田春菊)、 上田現「月の砂漠」、友松直之「こんな男じゃ濡れねえよ」といった所だろう か。対談の方が充実している、というのは珍しいかもしれない。。。実はレピッ シュ時代から上田現さんのことは知っていたのだが、個人の文章に触れたのは 初めてで、かなり好印象だった。他の物語、ライブ等を見てみたい、と思った。 また、木野花さんの演劇に対する姿勢を見て、一層興味を覚えた。
ちなみに私は、手あたり次第本を読む方でなく、気に行った作家さんの本 を読みつづけていくうちに、その作家さんが好きな作家・尊敬している作家… etc、の本を読むような、一種のツリー構造的な読書(違うか)をしている。そ ういう人には、視野を広める、という意味でいい本だと思う。しかしやっぱり 繁殖シリーズと比較すると値段が高いことは否めない…そこが残念だ。
今や言わずと知れた日本最大の巨大掲示板群「2ちゃんねる」のほぼオフィ シャルと言うべき解説本。著者の井上氏は2ちゃんねるの管理人である西村氏 とも親交があり、神宮前.orgという組織は管理人の西村氏が加盟している。そ ういう意味で今までのノウハウ本等とは一線を画している。
かといって2ちゃんねるにべったり、というわけでもなく、「ある程度」客 観的な所はポイントである。まあ、そういう本でなければほとんど読む価値は ないかもしれないが。特筆すべきことは、この本の大部分はネットで調べれば わかることであり、金を出して読むべきものではないかもしれない、というこ とである。(もちろん印税は関連者に入るので、そいういう面で協力したい、 という場合は話が別だが。) 逆に、この本の対談以外の部分をすんなりと読み 切れる人間ならば、2ちゃんねる、もしくはネットに通じている、と言えるで あろう。要するに、2ちゃんねらー(笑)としてのパスポートとしての1冊である。
本書は大きく見ると2部に分れていて、2ちゃんねるの説明・解説。そして、 管理人の西村氏と各氏との対談である。前述した通り、前半部分は買うまでも ない。後半の対談の相手は、田原総一郎、糸井重里、山形浩生、宮台真司、の 4氏。最初の2氏との対談は既出。糸井重里との対談はつまらないにも程がある のではないか、と思うくらいつまらない。よって、立ち読み済ますならば、読 むべきは最後の2氏との対談だけと言える。
2氏との対談はあまりにもコントラストがありすぎて吹き出してしまう。山 形氏との対談はまさしく「飲み屋で意気投合!」といった感じでとてもよく噛 みあっているのだが、宮台氏との対談は「説教されている厨房」といった感じ で、対談というよりは、親子喧嘩をハタで見ているようである。宮台氏の対談 は録音があれば是非聞いてみたいものである(笑)。ただ、「世の中がそういう 方向に向っているのであればそれは止めようがない」という考え方は斬新とい うよりは、ひょっとしたら開けてはいけないパンドラの箱なのかもしれない、 と感じた。
小室直樹氏は私の敬愛する宮台真司氏の師匠である。極右であると聞いて いたので、どんなにイカツイ人なのかと思ったら…非常に気が抜けてしまった。 写真はさておき、この軽妙な、三味線の似合うような講壇のような軽妙な語り 口。たまたま初心者向けの本だったからそうなのかもしれないが、少なくとも 内容はともかく、とっつきやすいと言える。
さて、内容。要約すると、まず「本当の資本主義」を企業が自然淘汰され ること・自由競争が行なわれていること・情報公開がしっかり行なわれている こと・自由に企業を起したり辞めたりできること、の4点にが満されているも のと定義し、そのような状態に至るまでの経過を説明し、現代日本の問題点に 触れている。この本の特徴としては、世界各国の経済を語るには、その文化的 なバックグラウンドを知る必要があるため、様々な宗教、特にキリスト教につ いて細かく語られている。(いわゆる、先進の「本当の資本主義国」が、キリ スト教国である、ということがあるのだろう。)この比較文化論(?)だけでも 十分に読む価値はあると思う。
で、その内容について色々思ったのは…そもそも「本当の資本主義」が成 立するのだろうか?ということであった。確かに「本当の資本主義」というの はモデルとして極めてシンプルで解析が容易なように思えるが、それで果して 世界的な経済が解析できるのだろうか?とかなり疑問に思えた。「本当の資本 主義」の国があっても、「本当でない資本主義」もしくは社会・共産主義の国 を相手にする、要するに「本当でない資本主義」の国が経済を左右するファク ターとしてあるのだから、仮に「本当の資本主義」を解析するための理論が成 立したとしても役に立たないのではないかと思うのである。
まだある。氏は「市場の法則性」というものについて語っている。以前私 が予備校に通っていた時、世界史の先生がルーズベルトのニューディール政策 について講義している時に「公共工事は経済に要をなさない。政府が介入して 市場を動かすのは無理だ」と語っていた。それからずいぶんと歳月が経つが、 今まで世界を見つづけていて、この法則はまったく正しいと思っている。この 本では、しつこいくらいこのことが語られているが、それを知っている人間に とっては「何をいまさら」といささかうざったいように思えるだろう。
所詮経済学者なんてこんなものか、と思わせなくもない一冊。ただ、読み 物としては非常に優れている。惜しむらくは、中世ヨーロッパでのキリスト教 でのユダヤ教の果たした役割について述べいただきたかった。
すごい!感激した!(c)小泉某
島田紳助は以前何かの番組で「大学に入ることの一番の意味は、自分では 想像もつかないような天才を見れることや」と言っていたよう記憶がある。こ れは本当にそうだと思う。並の天才のパワーをひしひしと感じるには直接触れ るしかないのかもしれないが、著者はどうやら並の天才ではないようである。 本という形を取り、なおかつ翻訳というプロセスを経てもそのエネルギーは衰 える所がない。
さて、誉めに誉めた所で内容について。まず、(今ある)コンピューターは どんなものであるのか、ということを数章にわたって説明している。ここでポ イントになるのは、コンピューターそのもののロジックを説明してるのであっ て、媒体を問わないということである。(もちろん、パソコン等であてはめる のが楽な説明方法であることは言うまでもない。)その後、コンピューターに は限界があるのか、そしてコンピューターの未来の予想が説明されている。語 弊がないように書くが、予想というのはしばしば根拠のない所に立てられるも のだが、この本にはしっかりと筆者自身の考えの根拠が書いてある。
私はこの本を2/3くらい読み進んだ時点で、自分の考えているコンピューター の将来像はもはや書く必要がない、つまりここに書いてあるので改めて書くこ とはないと考えた。私が書けばより繁雑になるだろうし、これ以上のことは書 けないと思った。そしてさらに1/3の残りの部分では現在広がっている、広が りつつあるコンピューティングについて記述してあった。これは私にっとてまっ た未知なる領域であった。そして、最後の1/3には完全に圧倒された。そこに、 筆者の哲学的な世界観はごく短く簡潔にまとめられているが、本当に必要最小 限のものがつまっている。ちなみに、未知の領域であったのは、並列コンピュー タ、自律的なコンピュータ、現在のコンピュータ及びそれを支えている考え方 の弱点、そして新たなる未来へのアプローチである。
私の場合、最初の方は(今ある)コンンピュータの基本的な部分についてで ありスイスイ進んだが、後の方は読み解いていくのにずいぶんと時間がかかっ たが最後の最後まで面白かっった。本気でデバイスとしてではなく、コンピュー タそのものについて知りたい・学習したい人間には必読の本であり、最良の入 門書と言えるだろう。初心者には最初の部分を読むのはそれなりに時間がかか るかもしれないが、現時点で最良のショートカットであると断言する。それほ どに読む価値のある本である。
ひさしぶりにツッコミ甲斐のある本:-)。そもそもポピュラー音楽を扱う人 間からみたクラシックへの誤解が満載、というか他にも「??」と思う所はあ る。一応指南書であるがゆえ、ツッコミ所だけを先に列挙しよう。
・(p32)「ヘッドホンによる音像の再現は…、スピーカー再生とは大きく違 います。」よく考えればその通りなのであるが、ミキサー側がヘッドホンでミ キシングしていたらその逆になるんじゃないかねー。と思いつつ。その差を感 じさせないようにするのがプロの仕事だと思うが。
・(p37)「ピアノは弾くことによって振動を指から大脳に伝えることができ るので、音感教育に適している」この前に、ベートーヴェンが40代の頃、ビア ノにほぼ直接頭を近づけ振動を骨通音にした、と書いているが、それならなに ゆえ指から振動を伝ええる楽器が適しているのか(笑)さっきと言っていること が違う素晴しい例(笑)。
・(p45)「音の歴史」。年表があまりに雑で利用価値が低い。これを鵜飲み にする…人はいないと思うが、必ずなにがどうなのかを検証すること。 (ex.1832 ベーム フルート完成。という記述は、ベームさんががんばってやっ と1832にフルートができた、という解釈にも取れるが、それは違う。詳細は長 くなるので書かない:-)
・(p59,60)「10Mとはヤマハ製のミニ・モニター・スピーカーで世界中のス タジオで使われている名器。10円玉4個の上にスピーカーを載せると、「マイ ルド」な「銅」の音になり、100円玉だと「シャープ」な「銀」の音になる。」 (゜Д゜)ハァ?相変わらずこういう伝説の類いが生きてるのですね…。(ち なみに、10Mがよく使われている理由は、家庭にあるような一般的なスピーカー を想定してミキシングするために使用されているのであって、音が善し悪し云々 で使われているわけではない。)
・(p71)「年齢による価値観の変化。幼児→少年→青年→成人=感性→理論 →情→念=ポップス→クラシック→演歌→御詠歌」図を無理矢理文字にしたの で、わかりにくいかもしれないが、要するに作者は日本人はみな一様に好みが 「ポップス→クラシック→演歌→御詠歌」のように変っていく、と言いたいよ うだが…まあ、あえて書くこともないでしょう。クラシック好きのジジイって 多いよね。
・(p78)「近頃、16chのアナログMTRを「マスター」にしデジタルのMTRを 「スレーブ」にして録音しているスタジオも見受けられるようになりました。」 まあ、個人の好みやから何も言わんけどね…アナログ機器のスペックが上った からって、スペックがそのままのデジタル機器と比較するのはフェアじゃない でしょう?:-)最近のデジタルリソーズの進歩は目覚しいよ♪
・(p119以降)「クラシックの手引き」これは…もうね。ちゃんと自分で勉 強してください、って感じです。いくつか強烈な抜けを書くとすれば「ベルリ オーズの項で幻想交響曲について触れられていない」「ブラームスの交響曲で 1番が抜けている」ツッコミ所ははっきり言ってこれだけではないので、音楽 室に「クラシック、これを聴け!」というリストでも作ってみようかと思いま す。
・(p181)「■柔軟な頭脳を保つ方法。(1)ジョークの連発=緊張と弛緩のリ ズムが眠っている能の活性化に役立つ。(2)好奇心旺盛たれ=森羅万象を写生す る俳句なども有効。(3)よく遊ぶこと=生活にメリハリがつき、仕事に集中でき るようになる。(4)おしゃれをする=生活にリズムとアクセントを与えてくれる。 (5)すべては修行=と思えば、苦しい時でも心に余裕ができる。」。。。。これっ てジョークですよね?(笑)。(4)はいざ知らず、それ以外は(゜Д゜)ハァ? の一言で片づけてしまおう(笑)。このことの真偽に関しては読者に一存するが、 私にはバカバカしことこの上なかった。
以上、「とりあえずメモしておいた(!)」ツッコミ所である。とりあえず、 まだまだ大量にツッコミ所はある。それを心して読むべきである。
ただし、一概にこの本を否定するわけでもない。音楽にもさまざまなジャ ンル分けがあるし、他のジャンルの音楽に接っする必要があれば、それなりの 知識を仕入れなければならない。そんな時この本は、「とっつき」としては役 に立つ。(もちろん、この本の知識だけだと恥をかくこと必須なので、必ず参 考文献等も参照すること)また、ミキサーとしての心得の書かれている数少な い本であると思う(思っているだけかもしらんが)。ただ著者の発言は一貫性が なく、かなり矛盾が見える。まあ、業界の様子を掴むための本程度に思えばい いだろう。
私は、現時点で見沢氏の著作は物語とアジ(アジテーション)の2つに分類で きると考えている。これは見事に「アジ」の方だ。アジというのは氏も認めて いる通り賞味期限があるので、出版されたらすぐに読まれなければならない。 (ちなみにの初版発行日は2000/05/20。) しかし、よく考えると本書にまとめ らているのは、出版された時よりも過去も言説であり、すでに賞味期限切れ(!) のはずである。
だがしかし。幸いにも文章は腐らずに後世に残る。(この本に収録された文 章の原文を見ていないからわからないが、氏は改訂癖というか、過去の文章に 手を入れることが非常に多い。つまるところ、レトルトパックして鮮度を保つ 努力がなされているのである。そこまでする作家さんはまず私は知らない。) その時の興奮を呼び起こさなくても、立派なエピタフとしてそのアジが残るの である。このエピタフは普通の文学とは違った味を持つ。その時代時代をクリ アに思いださせるような…なつかしい…味だ。(ただ、文章の鋭さから、「な つかしい」という表現は「?」と思われるかもしれないが。)
本書の構成は、各種雑誌のコラム等を編纂したものである。主な出典は 「BURST」「創」の2冊である。「創」は近所ではなかなか見かけない(1度置い てあるのを見かけたが、1月しか置いてなかった(苦笑))、「BURST」に至って は見たこともない(そもそも私がその手の本に近付かない、というのもあるか もしれないが)。一応両誌の読者層はわかっているので書くが、「BURST」読者 には非常にこの本を読んでもらいたい、と思う。絶対に「民度」は上るに違い ない。もちろん、両誌を見たことがない人も必読。ちなみに氏の「極悪シリー ズ」と同じ文章が収録されている。(こっちの方が出版は先)その点は御容赦を。
関係ないけど、装丁というか…表紙…すごいカッコイイです。見沢先生 LOVE(はぁと)
今、民族で一番旬なのは「パシュトゥーン人」だろう。もちろん、ユダヤ 人、パレスチナ人、というのもメイントピックスだが。ふと近所のスーパーで 見かけて、パッと内容を見て面白そうだったので買ってみた一冊。一夜のうち に読み通してしまった。こんなことがあるから、本屋めぐりというのは大切な のだ、と思う。
さて、内容は、民族紛争ごとに、その民族の起源や民族としてのバックボー ンを紹介するというもの。紛争と書いたが、世界を巻き込む大きな紛争から、 ごく裏にあるようなささいな内容が取り上げられている。読む際は資料を片手 に読むと知識が深まることうけあいである(歴史の教科書、年表、用語集、現 代用語の基礎知識、等々)。もちろんこの本だけでも大いに勉強になるが、色々 な情報とリンクさせることにより知識が深まる、というのは私の持論である。
さて、本の評価としては、日本人ならずとも必読、と言っておこう。本書 を読む前に、民族ってそもそもなんじゃらほい、と思っているひとが多いと思 うが(とくに日本人には)民族ってそんなものなのか、と価値観が変わるかも しれない。著者は、そもそも民族とはこれこれしかじかな物だ、とはっきり決 め付けることなく展開しているのにも好感が持てる。
この内容は、吸収してみれば、人と人とのつながりは何処にハードルをつ けるか、ということを考える上でも役に立つと思う。皇室の継承権問題なんか も、このへんの知識があると分かりやすい。
私は、ブックガイド、と言われると知識人のものである、と考えていた。 これは私の敬愛する柳美里さんのブックガイドである。「知識」というものは 明確な構造をなすものであり、他人の構築していった後を追うのは非常に合理 的であり、ごく当然のことだと思うのだが、文学というジャンルにおいてこの ような考え方があてはまるかは甚だ疑問である。もし当てはまるとすれば、単 なるマンネリ化を招くだけなのだが。そうではないと思いつつ、付箋を貼り付 けながらブックガイドを楽しむ。
本は2部構成。1部は雑誌の連載をまとめたもの、2部は各所で書かれた 書評をまとめたものである。1部は、書評と言うよりむしろ・・・いや、まさ しく書評という名を借りた日記とも言える。もちろん、端正かつ数多いな書評 はブックガイドとしてハイレベルなものであり、それゆえ付箋を貼る楽しみも あるのだが、その間に見える姿は、まさしく生で見た柳さんの気というものが どの本よりも伝わってくるような気がした。
2部は、各所から集めたということもあって、サイズ、クオリティ、統一 感が失われている。ただ、すべてが悪いということでなく、玉石混同、と言う べきか。書評としては、長すぎず、短すぎず、というサイズのものの出来がよ く、一番興味を惹かれる。2部もむしろ書評というよりか、「太宰治論」「中 島みゆき論」を初めとする、柳さんの思想を表現している。もちろんこれもす べてにあてはまるわけではない。
2部の最後(篠山紀信評以降)は、完全に「芸術批評(!)」である。芸 術の深遠を見つめ、かつ構造を明らかにしていこうという姿は作家というジャ ンルを超えた、ある種哲学に近いものがある。すべてが名文!必読!
これまた新しい本。読んだ時点で「ああ、あれか」という話が出ているコ ンピューター関連の本というのは雑誌意外では珍しいのだが、ただ情報が早い というだけでなく、かなりの有用性がある、というのが本書の特徴である。
内容は、まさにタイトルの通りコンピューターウイルスを初め、コンピュー ターのセキュリティーにまつわる話とその枝、が書かれている。どうして枝の 部分があるのか、というと現在のようにウイルス等が横行してしまった背景に ある某M$社の強引極まりない手口等を明らかにし、どのようにすれば安全が得 られるのか、という未来への指針を示すために必要なのである。
文体は非常に軽め、かといって、雑誌のようなオタク的な要素はなく、む しろ技術者の上司でしゃべりの上手い人が話しているとでも言えばいいのか。 堅苦しくもなく、バカな文章でもなく。かなりの分量のある本だが、私に言わ せれば非常に読みやすかった。
いささか気になった点をいくつか。もちろんこの方はセキュリティ全てに 長けているわけではないので、ちょっと「?」と思わせる文章もある。(だが、 全てのプログラムに長けている人間はまず存在しないと思うので当然ではある が)そこは仕方ない、と認識して、自分の経験で「ああ、こういうことだった のか」と確認していただきたい。
また、フリーのUNIXについて述べられている部分で「タダ」ということが 真っ先に出ていることはちょっと不満である。いわゆる、Unixソサエティでの 「フリー」というのは人により、時により、場合により非常に異なるのである。 (もちろん巷・・・日本に昔からある「フリーソフト」の「フリー」というの も違う意味合いなのである)。興味を持たれた方は、GNU、BSD、Linux関連の ライセンス(著作権)を読んでいただきたい。この点で私が強調しておきたい のは、「ソフトゥエアのソースを公開し万人が利用する権利がある(べき)」 ということである。
ウイルスやクラッカー(決してハッカーと言わぬよう:-)をむやみやたら と恐れるのではなく、相手のことをよく知り、しかるべき対処法を身につける のが賢いやり方、生き方ではないかと私も思う。セキュリティに関する初心者 向けの入門書としては非常に良い一冊だと思う。
私が購入した時点(9月^^;)での新作。ベースは雑誌連載の上に、書下ろ し文章を加えた物になっている。連載されていた雑誌の性質もあるのか、非常 にポップ、というか軽快なリズム感がある。氏の「囚人狂時代」などはかなり 面白い話なのだが、いささか文章には緊張感がある。この本には、檻の外に出 て「文章家、見沢知廉」として社会、特に若者に向けたアジテーションが詰まっ ている。
さらに内容を深く見れば、氏の近況・思想、現代社会の観察で占められて いる。雑誌連載ゆえ時事ネタも多いのだが、どういうわけか古さを感じさせな い。これは結局時間がいくら過ぎようとも真実は変わらない、ということの表 れではないかと思う。(氏の一連の作品はすべてその傾向があると思うのだ が・・・)またポップな文体ゆえ、現代社会(日本?)の向かっている方向の 危険性をすべての人間に広めるのに絶大な効果を持つと思う。そういう意味で、 日頃本を読まない人間にとって、見沢氏、そして社会の裏側(実はこれが真実 なのだが)を見つめるための入門書として広くお勧めしたい。
また、最後に刑務所に入っていた人たちの座談会が掲載されているが、こ れはどうも見沢氏の書いたフィクションではないか、と思われる。もしそうで ないとしたら氏がテープの書下ろしをしているのではないのか、と思われる。 それでもないのだとしたら、氏のアジテーションは刑務所内でも広く浸透した、 ということか。もしそうなら是非一度生で聴いてみたいものである。ただ、一 番迫力があるのはこの座談会だと感じた。獄の中で死ぬということはいかなる ことなのか・・・。読めばきっと背筋が凍るに違いない。
ちなみに、私が購入したのは初版本であるが・・・誤字脱字が非常という より、「こんな校訂で出版していいのか(笑)」というレベルにある。文庫化 に向けて、皆の手で校訂をしようではないか!。私も読んでいて気づいた物に はメモをしているので、そのうちまとめた上で出版社の方に送るつもりであ る:-)。
見沢氏のデビュー作にして超問題作。私はこの本を文庫版で読んでいる。 念のため。加筆修正がかなりある、とのことなので入手可能であれば、受賞時 の原稿、第三書刊から発売された版を比べてみることはかなり有意義であろう。
まず大まかに構造を説明する。5章に分かれていて、1章は刑務所内の話、 2章は若干古典的さが香る(香りはするが古典的ではない)昭和初頭の話、3 章は成田闘争を描いたもの、4章は精神病院を舞台としたもの、5章は北朝鮮 を舞台に、その間に回想的?に藤井斉から三島由紀雄まで、天皇を愛した?人 物を描く。追加加筆の上、現在のような形をとっているが、「修正」の巧みさ からか、1つの作品として非常にすばらしい出来になっている。
まず1章。多分、受賞時の作品はこれではないかと思われる。(違ってた ら指摘してください^^;)もちろん、修正加筆してあるので、よりリアルに描 かれていると思う。ここは、かなり「囚人狂時代」、「母と息子の囚人狂時代」 と話が被る部分が多い。よって、創作性、という意味では若干他には劣る。 (そういう意味では、「真実は小説より奇なり」なのだが)だがしかし、どこ かで見た「天皇からそして開放へ」というキャッチフレーズが一番似合うので はないかと思う。
2章。これは趣味が合わないと、ピンと来ないのではないかと思う。懐古 的趣味を持っている方ならのめりこんでしまうのかもしれない。(そういう人 を知らないのでなんとも言えないけど)ただ、個人的には読み込めばどんどん 良くなっていくのでは、と思っている。そして一番政治的なのはこの章かもし れない。(3章は・・・むしろ現実離れしていて、そんな感じがしない)
3章。これはかなり興奮した。ここも、見沢氏の経験が(というか全章そ うなのだが・・・)かなり生かされていてる上に、世間一般ではあまり語られ ていないように思えて非常に興味深い。もちろん、クライマックス(最後)に とんでもないエネルギーを感じるのだが、これはフィクションであろう。ただ し、ここで改めて「天皇」が持つエネルギーというものを実感させられる。外 人がこれを読んでも、「なぜにこんなにもクライマックスで盛り上がるのか」 理解不能だろう。
4章。これが一番物語めいていて、そして秀逸な作品として仕上がってい る。精神病院を描いているので、いろいろと口出しをしたいところがあるのだ が、これは折を見て1つの文章としてまとめるつもりなのでお楽しみに。一般 的に閉鎖病棟はこうなっている、と思われるのは本意ではないけれど、あなが ち間違いでもない(笑)。ただし、この話が一番印象に残っているのは、私が こういう特殊な状況に造詣(笑)があるからかもしれない。どなたか、この章 何度か読んでみてどんな印象を受けたか教えてもらえると幸いです。(つまり、 この章が再読に耐える章なのか、自分で冷静な判断力を持っていないのではな いか、と考えているのです。)
最後に5章。これは文庫版加筆ではないかと思われる。(新刊としての発 売時、4倍の訂正加筆とあったことから。そんなすぐに北朝鮮には行けないだ ろう、ということもある)。さて、この話を読む時は、 雨宮 処凛「生き地獄天国」 が比較の対象になると思う。ご参考までに。人間、犯罪になるのとならないの では、ずいぶんと差があるものだな、と思った。比較すると、北朝鮮に対する 見方がかなり違うのがうかがえる。「共産主義を主張する人間は、自分がその 共産主義のコマになることを考えて主張しているのか?」という疑問を抱くか 抱かないか。そこがかなりの違いである。雨宮氏はある意味、この話の中の登 場人物のようだと思えなくもない。ちなみに、私はコマになるのはゴメンであ る。そして、北朝鮮旅行の間に挟まっている数々の天皇にまつわるストーリー。 2・26事件にまつわる話、三島由紀雄にまつわる話はかなり衝撃的というよ り、単純に通り過ぎていく歴史上の事実を大きく広げ、その意味を十分にかみ しめようとしているところから、非常に意義のある文章だと思う。歴史の教科 書に・・・載せたら苦情が来るだろうが(笑)、歴史を学ぶ者にはぜひとも読 んでいただきたい。
しばしば、私は小説を交響曲とかぶせて見るのだが、どうも見沢氏の作品 を読んでいるとマーラーを思い浮かべてしまう。(対?と言える、ブルックナー は私があまり好きでないもので。悪しからず)最初は、1つの作品に十年以上 の歳月がかかっている、といえば、一番にブラームスを思い浮かべるのだが、 氏はブラームスというイメージではない。やはり・・・マーラーがピッタリだ。 よく考えればマーラーの交響曲1番は五楽章あって、ちょうど当てはまるので ある。(この後、1章削られればバッチリ?!)そういえば、マーラーは現場 で指揮をしていたのだったな。ここも似てる。深く掘り下げれば掘り下げるほ ど面白い・・・
最後に。文庫版オンリーだが、解説は宮台真司氏である。実は、この小説 にたどり着くのには、解説から入っている、というヘンないきさつがある。そ ういう意味でまた、両氏の不思議なつながりを感じるのである。見沢氏→宮台 氏と移行する人間は多そうだが、宮台氏→見沢氏というのはなかなか珍しいの ではないかと自分で思う。こちらも文章としてよくできているので必読である。
マンガです。結構ボリュームがあるので、読むのに2時間くらいかかりま した。これで1000円は安いよなぁ。ご存知、繁殖シリーズの最新作です。 連載がストップしてから、まだかまだかと待ちつづけてやっと出たですよ。
内容ですが、第3児着床(?)から生まれてしばらくの内容+第4児着床 のエピローグ、という構成になっています。連載はちらほら見ていたので大ま かな内容は把握しているのですが・・・春菊さんはどんどん男運良くなってま せんか?(笑)まあ、歳を重ねる、ということは恋愛対象になる人間が増える ということですから、サンプル抽出の腕さえあれば男運が良くなるのは必然で すが・・・。
やはり、書下ろしマンガが面白いですね。残念ながら4コマに関して言え ば、マンネリ化が否めない。最後のコマに「なんでやねん」「このマンガはフィ クションです」と書いてあることのなんと多いことやら。1本1本のマンガに しっかりオチをつけようとしてるのは無理なんじゃ、と思います。ストーリー のある4コママンガはメジャーになっていますから・・・まあ、普通のマンガ を書いている人が手を出すべき分野かどうかはちょっと判断が難しいです ね・・・
ただ、全体的な話の流れとしては、成長していく人間がどんどん増えてい くことによって、funnyの面白いより、interstingの面白さの度合いが非常に 増しています。春菊さんちを垣間見る、という意味ではこのシリーズの中では 一番ではないかと思います。
ただ、前から書いてますが・・・「このマンガはフィクションです」とい うPL法的逃れ方は未だに嫌いです。春菊さんの場合、現実と勘違いされるこ との予防線としてこれを書いていると思うのですが、これは逆効果だと思いま す。むしろ、読者とどこまでが事実かわかるような書き方をして、確信犯的に 「フィクションです」と書いた方が面白いし、春菊さんの苦労も減ると思うの ですが・・・いかがなものでしょうか?
最初にこの本を読んでからずいぶんと時間が経ってしまった。サイン会の 前に、喫茶店で、紀伊国屋書店の階段で、友人宅で、通勤電車などと違ってまっ たく日常と違う場所で読んでいるので、多分冷静な判断ができていないと思っ た。なので、珍しく(私は書評を書く本は1回読んだだけで書評を書いている。 2回読むことは・・・ほとんどない。あったとしても、それは書評という形を 取らない。)読み直しをした。速読でもいいのだが、じっくり読んだ。運が良 かったのか、そのまま読んだだけで色々な発見があった。そのあたりに重点を 置いて色々書いてみることにする。
「魂」の書評で、『「命」より「魂」の方が面白いのだが、その面白さは 「命」を読まないとわからない』、と書いたが、「生」はどうだろう?すでに 前の2冊を読んでいる私ではあるが、「生」を読み直して、「人間関係等をう まくまとめた序文」があれば1つの作品として成立する、と感じた。もちろん、 「命」「魂」の連作として味わうこともできるが、単独の作品として高く評価 できる。
普通、読者は読んでいると「真実より奇なり」である「ドキュメンタリー 的な部分」に集中しがちだが、「生」には真実を超越した名文が含まれている と思う。具体的にどこ、とは言わないが、柳氏と東氏との生活の回想、ドキュ メンタリー部分、その余事象の多くは真実を超越した−真実を超越したらそれ は何なのかと問われると少し困るが−知を超越したモノが存在する。
また、「命」「魂」の書評で、気分の高まりを関数的に表現した(ハズ) のだが、本当のクライマックス、というのはあっさりしたものなのだな、と同 感した。テンションの増加率は「命」で0から出発、上昇し、「魂」でその増 加の割合が最大になり、「生」で次第に落ち着いてゆき、そして再び0に戻る。 増加率というのは、登場人物の緊張感、生命に対する思いを表していると思う。
。と、いうことは、これですべてが終わってしまってもいいのだ。(もち ろん現実にそうあってほしくないが)物語が続くのか、終わるのかわからない。 願わくば−柳さんが「書く」ということで「魂」の値を再び上昇させることを 望む。
しばらく書評は見沢氏漬けになるが、興味のない方でも騙されたと思っ て本だけ読んでいただきたい。さておき、旅行に出て、大阪に到着する前に手 持ちの書籍を読み尽くしてしまった。大阪に着くなり、梅田で一番大きい書店 に直行、氏の著作(天皇ごっこは実家に置いてきたので後で読んだ)をあるだ け購入した。すでに、驚異的な存在、見沢知廉という作家に魅せられていたの だ。
さて書評。帯に大きく書いてあったコピーよりむしろ隅に書かれていた 「文芸か?裏バイブルか?アジテーションか?」これは正に的を得たコピーで あると思う。もちろん、すべての言葉の後ろに"?"マークが付いているが、こ の本がこのすべての要素を満たしていることは自明であろう。
内容は、序章を置いて、その後は日記形式で文章が綴られている。序章 は・・・必要なのか?と思った。これが事実であるならば−ないとしても−本 自体の統一性を欠けさせているように感じられ、少し残念だ。(読み込みが足 りないのかもしれないが・・・また、これがないとタイトルが成立しない、と 言われればそうかもしれないが・・・それなら別のタイトルをつけるべきだと 思う。)日記は、日付順に並んでいない。テーマ順に並んでいる。(デジタル テキストがあれば日付順に並べ替えて氏の思考を追うことができるのだが!誰 か!テキスト入力してみないか?)。テーマは一様に新しい。そして、ストレー トだ。
ところで、私は古典美術も好きだが、同様に現代美術も大好きである。 そして、「今」を追いかけている人を尊敬する。最先端が好きなのだ。この本 はまさしく「今」を描いている。元の文章は連載されたものだが加筆訂正する ことによって「今」に追撃しているのだと思う。もはや、文庫など出版するこ とを無視しているとしか思えないが、この「今」を一冊の本として扱う氏の行 動は絶賛に値する。(ただし、文庫化する時に、時事年表を付ければ、「時代 は繰り返す」のいい例となるかもしれない)読んだ時には(書評を書くまでに かなりの時間が空き、とてつもない事件が発生したため、「今」という感覚は この評を書いた時点では薄れているが)まさにこれこそ「文学であり、アジテー ション」であった。そして、この本は裏バイブルとして残るのであろう。店頭 で迷っているヒマはない。すぐ手にとり、買って(万引きは・・・ダメ(笑)) 帰り道で、通勤電車で読むのだ。脳が風化しないうちに!
重大なことを書き忘れていた。書き忘れるほど重大なことなのか、と言 われると困るのだが。見沢氏と宮台氏の共通点である。そもそも見沢氏に興味 を持ったのは、宮台氏が見沢氏の「天皇ごっこ」にあとがきを書いている、と 言うところから始まる。前の2冊から見えなかったこと、「アジテーション」 はここで目を全開にして現れた。2者のコアの部分は同じであることに気がつ く。違いは、方法論なのである。ここに、再び、私の脳を刺激する新たな存在 が現れたと確信する。
前の書評は前置きが長かったが、今回はいきなりトップギアで。
はっきり言おう。面白い。面白すぎる。世の中に様々な人間が存在する のは知っていたが、ここまでイッってしまった人間がいるとは想像だにしなかっ た。(ちなみに、私はキチガイ(私自身キチガイなのだが)は入院していたの でたくさん見てきたが、それでも「すげぇ・・・」と思うくらいなのである。) ロリコンおじさんなんか・・・マネしたいくらいだ。あいにくお金がないので そういうわけにはいかないのだが(笑)
もちろん面白いというだけではない。12年もの時間を経て出合った、日 本の重大事件の張本人が直に描写されているのである!ここでは触れないが、 興味があるのならば文庫の裏側の本の内容紹介に一部紹介されている。この名 前を見ただけでも記憶力のいい方なら食指をそそられるであろう。
前の書評で書いたが、「八王子医療刑務所」の実情は大きな山場である。 まさに神曲の世界、とても常人には想像できない世界であろう。これを知るだ けでも一見の価値ありである。(くどいようだが、私は閉鎖病棟に入院したこ とがあるが・・・見張り付きでも1日1回しか外に出られなかった。レクリェー ションは入院した時とタイミングがずれていて参加できなかった。ここに描か れていた、「神曲」的世界の断片でも味わえなくて残念である。)おっと、医 療関係者は、「面白そうだなぁ」とここに入ることを志願しないように(笑)。 イタイ目にあっても、私は責任を負いません:-P
総括。作者も「楽しんで」書いた娯楽作品である。ぜひとも電車の中で ニヤニヤしながら読んでいただきたい。
旅行に出かける時、カバンにはこの本と同氏の「囚人狂時代」、前回書 評を書いた立花氏の本である。最初に読んだのは立花氏の本だった。ほどほど の感触。飛ばし飛ばし読んだ。まあまあかな。そう思った。残り2冊は共に見 沢氏の本であり、いままでずっと「寝かして」きた本である。この本を先に選 んだのは、単なる偶然、立花氏の本にこの本の名前が出ていたからだ。旅行の 車中、大阪につくまで〜最初の電車で1時間寝た以外〜は一切寝ていない。元々、 乗り物で寝るのは苦手なのだが、今ではそれだけではなかった思う。もちろん・・・
前置きが長くなった。以降、氏の著作が続きに続くのでまず、履歴を軽 く述べる。高校在学中左翼セクトの活動家になり、79年の決起が実現せず、右 翼に転向。火炎瓶ゲリラ、スパイ粛清事件で逮捕され、懲役12年の刑を受ける。 獄中で書いた小説が賞を受賞。その後著作活動を続けている。
この本は一見温和そうな(?)タイトルとはうらはらに、怒涛のドラマ、 声も出せないような緊張感、筆者での生々しい獄中体験が描かれている。立花 氏は小説を書くための手法のみ目を通したようだが、そんなバカげた話はない。
まず、怒涛のドラマを支えるのに決して欠くことのできない人物、この 本の主役とも言える氏の母親の行動力に驚かされる。人はここまでも苦悩しな くてはならないのか、と思わずにはいられない。読んでいて、「ここで正義の 味方が登場して、救ってあげないのか!」と思ってしまう。しかし、氏の母親 は苦労を乗り越えて今の見沢氏を作り出したのだ。
そして緊張感。これは氏と氏の母親が交換している手紙からひしひしと 伝わってくる。もっとも張り詰めた時は、氏が死を意識した時であろうか。あ まりネタバレするといけないのでここまで。
そして獄中描写。この後氏の著作を立て続けに読んできたが、この本で 描写されていることが一番手記的で、氏がどのような生活を送ってきたか、と いうのを知るのに役に立つであろう。後で書評を書く「囚人狂時代」はむしろ 一般論であり、氏はいかなる体験をしたのか、ということに関してはこの一冊 を読むことをオススメする。(ただ、八王子医療刑務所に関する記述が少ない。 これについては「囚人狂時代」を読むことをオススメするが・・・まず、これ を読んでいる方には縁がないであろう(笑))
この本を読んでいて、頭が真っ白になった瞬間。それは氏と関連の深かっ た某氏が自殺した、という場面である。これまで、獄中の氏を支え、励まし、 勇気付け、そして氏の母も気遣い、はげましてきた人物が自殺。これほど残酷 な筋書きがあるだろうか。だが、これが真実なのである。
真実は小説よりも奇なり。前述した、自殺した方の時世の句はまた、感 動的である。B級のライターが書いた恋愛ドラマにうつつを抜かす人々に読ま せたい、いや読まねばならない。「リアル」というものを知るのに、これ以上 の書はない。そして、流れ落ちる涙を頬で感じてもらいたい。